読書「果糖中毒(ロバート・H・ラスティグ)」-肥満への処方箋はとてもシンプルだった

読書(社会その他)

 

アメリカや日本などの先進国のみならず新興国でも肥満が進んでいる。肥満が進むと成人病の発病率が高くなることが分かっており、医療費負担を押し上げることになる。肥満の解決は世界的な課題だが、そもそもなぜこんなに肥満が増えたのか。過去28年で肥満人口が2倍に膨れ上がった謎を科学的に解明し、その解決策を探る。

昔より太った人が増えたと感覚的に思っていたが、数字で見るとやはり圧巻である。電車や飛行機で肥満体形の人が隣に座った時の圧迫感たるや。

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すべてのカロリーは同じではない

ダイエットの基本はカロリー計算であり、摂取カロリーより消費カロリーが多ければ痩せるという信仰がある。が、これは正確には正しくない

肉体は正直で精密であり、摂取カロリーが減れば消費カロリーを減らして生きるためのバランスを取るようにできている。摂取カロリーを減らせば一時的には体重が減るが、途中で止まってしまう理由はこの肉体の仕組みである。

カロリー信仰の前提条件は「どのような食物から摂取してもカロリーは同じように消化される」ことだが、ここに誤りがある。たとえばアステルパームなどの人工甘味料を使った清涼飲料水は低カロリーだが、これを飲み続けると痩せるどころが太る結果になりかねない。

何からカロリーを摂取するのかが重要である。

肥満のメカニズムとインスリン

なぜ人は太るのか。それも一度つくと減りにくく、あらゆる成人病のもとになる内臓脂肪が増える仕組みがある。

  • 人が何か物を食べると血液内の糖質、いわゆる血糖値が上昇する。
  • 膵臓からインスリンが分泌され血糖値を下げようとする。
  • インスリンはグリコーゲンを生成し、肝臓や筋肉内にエネルギーとして最大限貯蔵する。
  • 血中アミノ酸を筋細胞に送る。
  • 余分な脂肪、血中脂質が脂肪細胞に蓄えられる。

そして、人類は生き残るために一度貯蔵したエネルギーは簡単には手放さない。これは古来から人類が飢餓によって死んできたことからの生存本能。

インスリンが過剰に分泌されると内臓脂肪になってしまうのなら、太らない基本的な対策はインスリンの分泌量を抑えることである。

犯人は果糖

かつて脂肪が肥満の犯人とされたことから低脂肪食が推奨された歴史がある。脂肪は食の味に深く関連しているため、低脂肪食は残念ながら美味しくない。そこで登場したのが糖質を多く摂取する方法である。甘みを付けたショ糖や人工甘味料。しかもこれらは低カロリーだからダイエットにピッタリのはずだった。

しかし、低カロリー低脂肪食に切り替えても痩せないどころか太る人が大量に発生。なぜなら肥満の犯人は果糖だったからである。

肥満度が急上昇したここ30年で人の食事カロリーに占める炭水化物の割合は40%から50%に増大し、その中でも果糖は8%から12%に増大している。なんと30年前の2倍、100年前の30倍である。人の肉体のメカニズムは100年で果糖を正常に処理できるように変化してないのである。

解決策は低糖質・高食物繊維食と運動

世の中にはさまざまな食事法やダイエット法があるが、成功しやすいダイエット法や健康な人種の食事には共通点がある。それは、低糖質で高食物繊維が中心の食事である。

たとえば、原始時代まで遡った食事を推奨するパレオダイエット、地中海の人々の食事、伝統的な和食、完全菜食主義者のヴィーガンなどである。これらは基本的に精製された白米やパンなどの摂取がゼロか少ないかであり、魚や野菜などを素材のまま食べることが多い。

ただ、人種によって内臓脂肪の付きやすさや消化酵素が違うため、普段食べなれておらず購入が難しい食べ方を無理にやる必要はない。

たとえば日本人は伝統的に穀物主体の食事をしており、海藻を消化する酵素を持つ、そして内臓脂肪がつきやすい。アルコールやカフェインに弱く、乳製品を分解できない乳糖不耐症の人も多い。

食物繊維には食物が肝臓に流入するときの速度を十分に消化可能なスピードまで落とす働きがある。

これにより血流が緩やかになり、内臓脂肪がつくのを防げる可能性がある。また、これら野菜などに含まれる微量成分が身体によい影響を与えるものと考えられている。

ただし、この食物繊維は一度破壊されると元には戻らない。野菜ジュースや果物ジュースになってしまっては、食物繊維の働きが期待できなくなる。だから、なるべくスーパーで素材のままの野菜・果物を購入し、食物繊維を破壊せずに摂取するのがよい。

やめるべきもの、やったほうがいいもの

ここまで読んだら最終的にやめるべきものが何かと聞かれた簡単である。

  • 清涼飲料水、炭酸飲料;砂糖、人工甘味料、ショ糖など太る要素がたっぷりである。炭酸飲料より野菜ジュースやオレンジジュースなどの清涼飲料水の方が果糖が含まれていることも多いので、どちらも避けるのがよい。
  • ファストフード;ハンバーガーやポテトにはそれなりに栄養素が含まれているが、加工肉や加工パンには多くの果糖が使われている可能性が高い。
  • 加工食品;賞味期限を延ばすために多くの添加物が使われている。そこには果糖も多く含まれている。

なら、普段の生活からどうするのが良いかといえば、これも簡単。

  • 和食
  • 魚、大豆中心にタンパク質
  • 季節の野菜と果物から食物繊維

ファストフードと加工食品やジュースが肥満の元凶なのだとしたら、アメリカはグローバリズムと資本主義のために世界に悪影響ばかり及ぼしてくれたことになる。ジャンクで安い食べ物や炭酸飲料はある意味中毒的に美味しい物ではあるが、健康を害してまで食べる価値があるかと問われると、やはり考えてしまう。

日本人でも肥満が増えたという感覚的なものは持っていて、特に太った小学生が増えたような気がする。これはファストフードだけでなく運動不足などの要素もあるのだろう。海外出張に出かけても、中国では6年前は痩せていた人が多かったのに、今年はすっかり太った人が多くなった印象である。

太ってることは、たくさん食べることができるという金持ちの証だ、という考えは過去のもの。いまは貧困層の方が肥満になっている傾向にある。

日本でも様々なダイエット方法やジムでのトレーニングが紹介されているが、太らない方法は極めてシンプルな仕組みなのだ。せっかく日本に住んでいるのだから、近海で取れた魚、山で取れた山菜や果物や野菜など、大地の恵みを中心の食事にすればいいだけ。

つまり、生まれた土地のものを食べる。結局は基本に立ち戻ることで問題は解決する。そんなあまりにも簡単な基本的なことを忘れていただけである。

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