読書「風神の手」道尾秀介

ミステリー要素がたっぷりの短編3部作。

すべての短編は最後に繋がっている。舞台はちょっとした田舎で鮎の火振り漁が有名な町。

そこに死ぬ前に事前に遺影を撮影する写真館がある。そこに飾られている写真に写っている人たちと関係している人たちの物語。

30年以上前にあった小さな恋の物語。田舎独特の風習と習慣に囚われつつも、そこから抜け出そうと苦しむ姿が痛々しい。正義感とちょっとした誤解から起こってしまった悲劇。一度ついてしまったウソを取り消せなかったばかりに連絡が途絶えてしまうことになる自業自得。

そんなやるせなさを残す第一話。

小学生時代の男友達との友情ってあったよな。とおっさんになると思い出す懐かしい思い出。でも、それは毎日を面白おかしく過ごすためのもので、時には嘘をついたりしたことも。

最初は少しだけ話を盛っていたのだけど、少しずつ相手を喜ばすためにウソが大きくなる。そして、相手もウソを言っていて「嘘つき合戦」をしていると思っていたのがだが、実はそれは自分がそう思っていただけで、相手は決して嘘をついていなかった。

そのときに相手のことを思って決意した行動は、最終的に二人を大人になっても親友として間柄を続けることになる。男の子って何かを一緒にやって人とずっと長い友だちになる。そういうものだということが分かる第二話。

そして、第三話。

現代。第一話ですべての発端になった事件のあらましが分かる。そこには悲しい理由があったけれど、だからと言って事件を起こしたことが許されるわけではない。そして、その事件のキッカケの一つは第二話の少年たちも関係していた。

でも、すべての発端は、偶然に吹いた一陣の風だった。まるで風神がそっと手を差し伸べたように。

人は生きている限り、少しずつ他人の人生に影響を与えている。

それが小さい町であればより顕著に現れるが、それは都会でも同じはずなのだ。

歴史や人生にifはないけれど、もしあのときの行動がなければ、もしあのとき違う行動をとっていれば世界は変わっていたのかもしれない。

いくつもの異なる世界が存在するパラレルワールド。最近のアニメだとシュタインズ・ゲートとシュタインズ・ゲートゼロの「世界線」という言葉になる。少しずつズレた世界は本当に存在するのか。

それをツラいことと考えるか、だから人生は面白いと前を向けるか、で見えてくる世界は変わっていくのだろう。

人生は面白い。そして、これからはもっと楽しい。

風神の手
朝日新聞出版