読書「脇坂副署長の長い一日」真保裕一

読書(小説)

久しぶりに真保裕一さんの小説を手に取りました。

今作の主人公は、とある県の警察署の脇坂副署長。この副署長というポジションが絶妙である。

署長というと偉そうな権限を持っている人、県警に行くとエリート臭がバリバリの人。副署長というと管理職で、上と下に挟まれてぐぬぬと言っている勝手なイメージを持っているのです(警察の方、すいません…)

この町出身のアイドルが一日署長を務める日、この日が脇坂副署長にとって長い一日の始まりだったのです。

早朝、若手警察官の親名義のスクーターが事故を起こして放置されている通報を受ける。すわ、警察身内の不祥事を隠さねばならぬと動き出す。

警官と結婚した娘は実家に帰ると、母と弟が食器やカップラーメンを放置したまま家にいない。そして、弟が喧嘩の末に怪我をしたと警察から連絡を受ける。

アイドルの一日署長のための警備を行い、順調に進んでいたところに「アイドルに薬物疑惑がある」との手紙が発見される…

よくもまあ、こんなに色んなことが同時に起こったりするものである。

ああ、これは警察官のドタバタ活劇なのかな、と読み進めていくと途中から副署長の過去にも関係する事件の香りが漂ってきます。

朝から起こっていた全ての出来事が一本の糸に繋がっていく。

そこには、派閥争い、過去の汚点、他人を引きずりおろす謀略、さまざまな人の思惑と正義が交錯するのです。

中盤まではゆっくり進んで行くのですが、終盤には一気にたたみ掛けるように話が急展開していきます。このあたりはホワイトアウト奪取のテンポの良さを彷彿とさせます。

最後は男同士の猜疑心、嫉妬心、出世欲など汚い面がたくさん出てくるのですが、最後の最後で警察官という職務に矜恃を持ち続ける男たちの会話シーンが清々しい気分にさせてくれます。

なんのために出世するのか。出世してなにがしたいのか。

すべての働く人に同じように問い掛けられた一言が自分の胸にも刺さりますが、職務への矜恃を持った男たちの最後のシーンが素敵でした。