【読書】チーム3(堂場瞬一)

あの箱根駅伝学連選抜チームのメンバーが帰ってきた。今度は孤高のエース山城も引退し、いよいよ次代の若手ホープ日向に期待がかかる東京五輪。しかし、どうにも結果が残せない日向に対して、陸連やお節介アンカーである浦が仕掛けたのは山城を日向のコーチにして刺激を与えるという奇策。

マラソンランナーを引退して広島県は瀬戸内海の島にある実家でレモン栽培を手伝う山城。自分以外の誰に対しても興味がなく、何かを他人に教えるなどもっての外と最初は断っていた山城が、最後はついにコーチにつく。

走りのセンスは一級品なのに、センスだけで結果が出てしまったことで、かえって自分を追い込むこともなく、周りに言われたことだけをやり、何となく結果が出てしまっていると、きっとこんな風になる。すべてが他人事のようで、自分が何をしたいのかが見えてこない。

嫌がることをやらず、褒めて伸ばして怒らない、追い込まない、それだけでは到達することのできない領域に踏み込むには最後は精神論なのだと。

何でもかんでも精神論は嫌われる時代になり、練習も休憩もすべて科学的で合理的であることが推奨される世の中において、やはり最後に突き抜けるには精神論が必要なのかもしれない。余計なことは考えず、目の前にあるレースというより自分自身との戦いに集中する。常に自己ベストを更新することだけを考えていれば、自ずと結果はついてくる。

なんだよ、結局最後は精神論かよ、と言われそうだが、ああ、そうだよ精神論だよ、と何のためらいもなく言い放つところは素敵である。そう、練習であそこまでやったんだから本番でもできる。そういう自信をもって挑むことが、最後の最後で自分の折れそうになる心を支えてくれるのだ。

フルマラソンのために60km走を実際にやっているトップランナーがいるかどうかは知らない。瀬古さんの走り込み必須論を冷ややかに見ていた人は多いはずだが、残念ながら前日本記録保持者の設楽選手は最大でも30km走までしかやらない、とのことだが東京マラソン以降結果が付いてきていない。一方で、ひたすら走りこむ距離が長い川内優輝選手は、日本記録には辿りついていないが、どのマラソン大会でも大崩れせずに上位にも顔を出している。

我々市民ランナーがどちらを目指すかというと、川内優輝選手みたいにタフな選手であろう。やはり、そのためには長距離を走りこむことが必要なのだろう。

物語の終盤、まさかの山城の福岡国際エントリーとペースぺーカー、いや、二人チームとなって日向を引っ張る姿には、結局身体でしか教えられない、身体で覚えるしかないことは沢山あって、それは言葉では通じないもので、でも分かる人には分かるもので…というオッサンなのに汗臭くて熱くなる物語でした。

さて、四の五の言わずに距離を踏む練習しなきゃな、とビールを飲みながら本を読み終わり、腹をさすりながら思うのでした。

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